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今朝の朝日新聞に、M&Aの契約書に関する記事が掲載されています。いわゆる「経営者保証」の解除に関する問題です。
M&A、経営者保証解除されず 金融機関に事前相談せず(朝日新聞2024.7.12)
この記事では、M&A仲介の一部の案件において、仲介による買収の成約を優先するあまりに、売り手の利益が軽視されているのではという指摘がされています。その一つの事例として、売却後も、売り手側の「経営者保証」が解除されていないという事例が取り上げられています。
この「経営者保証」とは一体何でしょうか?
事業経営に必要な資金は、自己資金の他、金融機関からの借り入れを受けることになります。この借入の際に、従来は社長やオーナーなどの経営者個人の保証を付けて融資をするという習慣がありました。特にオーナー経営の中小企業の場合、会社だけでなく、個人に対する信用をあわせて考える場合が多く、会社の借金の返済が困難になった場合に、その社長やオーナーの個人保証をとっておくという習慣がありました。但し最近では、所有と経営の分離、事業承継あるいはM&Aの増加を受けて、経営者保証なしの融資も随分と増えた印象です。
この経営者保証のついた借入が残ったままで、会社を売却すると、どうなるでしょうか?
⇒会社売却後も、引き続き保証人であることが継続することから、万一会社の借入金返済が困難になった場合には、旧オーナーである保証人に対して返済請求がされてしまいます。既に株式を売却し、引退した後にも、このようなリスクが残存することは、そもそも事業承継による引退という目的とは異なり、売却側としては通常望まない状況と思います。しかし、現実の仲介の現場ではこのようなケースが散見されて問題になっているという指摘です。
このようなケースでは、どうすればよかったのでしょう?
⇒M&Aの契約書の事前のチェックが重要です。M&Aのプロセスでは、守秘義務契約、基本合意契約書、株式譲渡契約等、普段聞きなれない契約の締結が続きます。また、これら契約書に含まれる事項の他に、他えば本件経営者保証の取り扱いについては、譲渡後の重要な利害事項として、交渉初期の段階で、売り手側からその扱い(解除等)を提示しておくべきと考えられます。仲介という枠組みの中では、成約が優先されるケースがあるとの記事の指摘ですが、そうであるならば、仲介業者任せにせず、売り手側は売り手サイドの立場で専門家のアドバイスを受けるべきと思います。
当事務所では、M&Aや事業承継に関連する経験を活かし、権利義務に関する契約書(案を含む)の作成・確認・チェック等アドバイスを行っています。既に存在する契約書案に対するセカンドオピニオンも実施しています。どうぞお気軽にお問合せ下さい。